公的医療保険は、私たちが日常的に利用する医療サービスを経済的に支える大切な制度ですが、その内容についてはあまり知らないまま利用している人が多いのではないでしょうか?
特に2024年12月からマイナ保険証が基本化されるので、いったい何が変わるのか気になっている人も多いと思います。
この記事では、公的医療保険の基本的な仕組みとメリット、そしてマイナ保険証について解説していきます。
目次
医療保険とは
日本で加入できる医療保険は、国や地方公共団体などが運営する「公的保険」と、保険会社などが運営する民間保険」の2つに大別されます。
今回ご紹介する医療保険とは、「公的医療保険」を指します。また、公的医療保険は加入できる条件によってさらに3つに分けることができます。
- 健康保険
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療制度
健康保険
健康保険は、主に会社員とその家族が加入する医療保険です。
加入者は、毎月のお給料から保険料が天引きされ、集められた保険料は加入者が医療機関で支払う治療費を補うために使われます。
健康保険に加入していることで、病気やケガ、死亡や出産にかかる費用の経済的負担を軽くすることができます。
任意継続被保険者
会社員は退職すると健康保険の被保険者ではなくなります。そこで、一定の条件を満たすと健康保険を引き続き利用できる「任意継続被保険者制度」というものがあります。
これにより、最長2年間にわたり退職前の健康保険に加入することができます。
ただし、加入には以下の条件がありますので、事前に確認してみてください。
・健康保険に継続して2ヶ月以上加入していること
・退職後20日以内に任意継続の申請をすること
国民健康保険
国民健康保険は、自営業者とその家族等が加入する医療保険です。
保険の内容は健康保険とほぼ同じですが、傷病手当金や出産一時金が支給されないなどの違いもあります。(後述します。)
また、支払う保険料は収入や世帯状況によって変わるため、会社員が加入する健康保険料とは異なる場合があります。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度とは、75歳以上の高齢者や一定の障害を持つ65歳以上の人が対象の医療保険です。
75歳になると、勤めているかどうかに関係なく、それまで加入していた医療保険(国民健康保険や健康保険)から自動的に切り替わります。
基本的に、窓口の医療費の負担割合が健康保険や国民健康保険より抑えられますが、現役並みの所得がある場合は、あまり変わらないケースもあることに注意が必要です。
公的医療保険のメリット
公的医療保険に加入していることで得られるさまざまなメリットについて、代表的なものをご紹介していきます!
療養の給付
公的医療保険のもっとも代表的なメリットとして、病院で診察や治療を受けた際の医療費の何割かが保険でまかなわれるものです。よく「医療費3割負担」と言われているものがこれにあたります。
加入者は医療費の自己負担割合の金額のみを支払えば済むので、経済的負担を軽くすることができます。
なお、自己負担割合は年代や所得によって以下の通りに区分されます。
年代 | 自己負担割合 |
小学校入学前 | 2割 |
小学校入学後〜70歳未満 | 3割 |
70歳以上75歳未満 | 一般所得者は2割、現役並み所得者は3割 |
75歳以上 | 一般所得者は1割(一定以上の所得がある人は2割)、現役並み所得者は3割 |
傷病手当金
病気やケガによって一定期間働けなくなった場合に、傷病手当金を受け取ることができます。
傷病手当金は働けない間の給料の補てん的な意味合いですが、給料相当額の満額を受け取れるわけではなく、最大で平均標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。
出産手当金
産前休暇や産後休暇など、出産を理由に仕事を休んだ場合に標準報酬日額の3分の2相当額が支給される制度です。こちらも傷病手当金と同様、産前産後休暇によって減った給料の補てんの側面があります。
出産育児一時金
健康保険の被保険者や被保険者の扶養者が出産した場合は、一児につき原則50万円が支給されます。こちらは健診費用や入院費用などをカバーするための制度です。
一見、50万円という金額だけを見ると「たくさんもらえるんだ!」と思われがちですが、出産費用はそれなりに掛かります。
時代や物価などを考慮し増額に増額を重ねてきた経緯があり、令和6年11月現在は50万円となっています。
出産手当金と出産育児一時金の違い
出産手当金と出産育児一時金は名称が似ているため混同しがちですが、目的や内容などは異なります。
出産手当金 | 出産育児一時金 | |
目的 | 産休によって減少する給料を補てん | 出産に係る健診費用や入院費用 |
もらえるお金 | 1日あたりの給料の3分の2 | 一児につき、原則50万円 |
課税の有無 | 非課税 |
高額療養費制度
高額療養費制度は、医療費が一定の金額を超えてしまった場合、その超えた分を申請すればあとから払い戻しを受けられる制度です(後述するマイナ保険証の導入により、上限を超えた分の費用を負担する必要が無くなります)。
あくまでも後からの払い戻しではありますが、これによって、長期入院などで医療費がかさむ場合の自己負担がかなり軽減されます。
それでは、ここで簡単な例を1つご紹介します。
例:標準報酬月額40万円(窓口負担3割)の人が月100万円の医療費が掛かった場合
自己負担限度額:80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
最初に30万円(100万円の3割)を負担することになりますが、限度額が87,430円のため、高額療養費として差額の212,570円が戻ってくるということになります!
また、医療費が高くなる場合というのは、複数ヶ月にもわたって入院する場合などが考えられますが、高額療養費制度には多数回該当という仕組みもあります。これにより、1年のうちに3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降は更に自己負担限度額が下がるため、経済的な負担を抑えることが可能です!
※上記の例の場合、自己負担限度額が44,400円になります。
健康保険と国民健康保険の違い
基本的に健康保険と国民健康保険の内容は同じですが、国民健康保険には傷病手当金と出産手当金がありません。どちらも給料の補てんという意味合いがあるのですが、”給料”とは会社員や公務員が労働の対価として受け取るものです。
よって、給料の概念が無い自営業のかたには、傷病手当金と出産手当金の対象にならないのです。
もし自営業のかたで病気やケガによる収入減をカバーしたい場合は、民間保険に加入しましょう。
【2024年12月から基本化】マイナ保険証について
2024年12月2日から従来の健康保険証の新規発行は無くなり、マイナ保険証の発行が基本化されます。これは、医療システムと連携を図りやすくするという点や国民の利便性向上の点から方針が固まったものです。
マイナ保険証を使うことで、これまでの健康保険証にはない様々なメリットを受けられます。
- 診療情報に基づいた適切な医療が受けられる
- 高額療養費の手続きが簡素化される
- 確定申告の手間が省ける
診療情報に基づいた適切な医療が受けられる
医療機関で受診時や処方箋をもらう時に、マイナンバーカードを使った診察情報の提供に同意することで、過去に処方されたお薬や特定健診などの情報を医師・薬剤師にスムーズに共有することができます。
これによって、初めて受診する医療機関や薬局でも、医師・薬剤師が患者のデータを確認することができるため、利用者はよりスムーズに自分に合った適切な医療を受けられます。
高額療養費の手続きが簡素化される
従来までは高額医療費の支給を受けるためには、医療機関・薬局の窓口で一度支払った後に自分で支給申請書を提出する必要がありました。
しかし、マイナ保険証を導入することで限度額を超える分を窓口で支払う必要がなくなります。
最初から限度額以内の窓口負担で済むことは、高額医療費の対象となる人には大きなメリットになりますね。
確定申告の手間が省ける
FPの学習で医療保険制度を学ぼう!
本記事では公的医療保険についてご紹介しましたが、FPでは医療保険の制度やメリットをはじめ、体系的に幅広く学ぶことができます。
ぜひ今回の記事で興味を持たれた方は、FPライトの記事をさかのぼってみて、活用できるものがないかみてみてくださいね。
まとめ
公的医療保険は私たちの健康を支えてくれる重要なものですが、制度について詳しく知らないままに利用している場合も多いと思います。
公的制度というのはその仕組みや利用条件について知り、ひとつずつ行動することで最大限に活用できるものです。
FPの学習を通して公的医療保険の基本的な知識やメリットなどを習得することができますので、ぜひ積極的に学習し自分と家族のために賢く医療保険を役立てていってください。