【年収の壁】178万円の壁誕生!?生活への影響を元公務員FPが徹底解説!

【元公務員FPが解説】103万円の壁とは?知っておくべき最新情報!

パートやアルバイトの方が特に意識する「年収103万円の壁」。一般的に、年収が103万円を超えると税金が掛かるという認識を持っている方も多いはずです。その中、2024年の衆議院議員選挙にて国民民主党が「年収103万円の壁を撤廃し、年収178万円まで引き上げる」ことを公約に掲げたことが大きな話題になっています。場合によっては、年収の壁のルールが大きく変わるかもしれません!

そこでこの記事では、年収103万円の基本的な情報や年収178万円になった場合の我々の生活の変化などを細かく解説します。

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この記事の著者

FPのライト専任講師 ゆーさく

・元市役所職員
・公務員在職時にファイナンシャル・プランニング(FP)技能士を取得
・現在は、FPのライト専任講師を務めるほか、日本FP協会支部活動にも参加し、地域独自のFPの普及活動を行う。
(AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士)

103万円の壁とは

103万円の壁とは

103万円の壁とは所得税が課せられるか否かのボーダーラインを表し、年収を103万円以内に収めれば所得税が掛からないことになります。

”年収”とは額面金額を指し、そこから税金や社会保険料など諸々引かれて、残りの手取り金額が皆さんの口座に振り込まれます。年収と手取り金額を混同する方も多いので注意しましょう!

年収 :額面金額のことで、税金や社会保険料などが引かれる前の金額
手取り:口座に振り込まれる、皆さんが自由に使える金額(可処分所得とも呼ばれます。)

なお、余談ですが103万円という中途半端な金額の根拠は、基礎控除48万円と最低の給与所得控除55万円の合計103万円に基づきます。

年収178万円の壁とは

そして178万円もまた中途半端な金額ですが、これにも根拠があります。

実は、現在の103万円の壁は1995年から見直されておりません。しかし、皆さんもイメージできると思いますが、当時の物価と現在の物価は違うわけです。

そこで、1995年当時の全国平均の最低賃金の611円と、現在の最低賃金1,055円の上昇率およそ1.73倍を103万円に掛けた金額、つまり「178万円」を壁として引き上げるべきというのが今回の内容になります。

年収の壁引き上げによるメリット

年収の壁引き上げによるメリット

年収の壁が引き上がることによって、様々なメリットが考えられます。

  • 労働者や労働力が確保できる
  • 収入が増える
  • 正規職員(親)の税金が安くなる

この3つのメリットが中心になりますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

労働者や労働力が確保できる

103万円の壁の影響で、「壁があるから年収を103万円以内に収めよう」という意識が強く働いておりました。そのため、働く側にとっては収入が増えにくく、雇う側(=会社など)にとっても労働力が不足するといった双方にデメリットがありました。

壁が178万円まで引き上がることで、この問題が解消できる期待があります。

収入が増える

壁が178万円に引き上がることで、単純に収入を増やしやすいという点もメリットと言えます。

正規職員(親)の税金が安くなる

この点について触れている記事は少ないのですが、年収の壁が178万円に引き上がることで、子を持つ正規職員の税金が安くなる可能性があります。

では、どのくらい税金が安くなるかを例を使ってご紹介します。

諸条件&補足

・子の年収を104万円とする。(▸103万円の壁オーバー)
・配偶者あり(専業主婦)
・給与所得以外は考慮しない。
・住民税をはじめ、記載の無い内容は考慮しない。
・あくまで「どのくらい税金が安くなるかを感じてもらうことが重要」ですので、途中式の説明は割愛します。

例:年収600万円の公務員で、19歳の子を持つ場合

103万円の壁【総所得金額&所得控除】
①給与所得
=600万円-(600万円×20%+44万円)
=436万円
②基礎控除
48万円
③配偶者控除
38万円
④扶養控除
0円
▸子の年収が103万円を超えているため、扶養控除を受けられない。

【課税総所得金額】
436万円-(48万円+38万円)
=350万円

【所得税額】
350万円×20%-42.75万円
272,500円
178万円の壁【総所得金額&所得控除】
①給与所得
=600万円-(600万円×20%+44万円)
=436万円
②基礎控除
48万円
③配偶者控除
38万円
④扶養控除
63万円(特定扶養親族)

【課税総所得金額】
436万円-(48万円+38万円+63万円)
=287万円

【所得税額】
287万円×10%-9.75万円
189,500円

つまり、壁が引き上がることで83,000円も税金が安くなるのです!!

103万円と104万円の差がデカすぎる

上記の例から、年収を壁の中に収めることの重要性がわかったかと思います。

子の年収を103万円に収めていれば、扶養控除という親の税金が安くなる恩恵を受けられる一方で、104万円以上の場合は控除を受けることができません。

この”1万円の差”によって税金が8万円以上も変わる(※)となれば、子に対して「働き過ぎるな!」と言う親御さんも多そうですね…
※税金のインパクトは、親の年収や子の年収、年齢によって異なります。

他にも存在する!年収の壁

他にも存在する!年収の壁

今回、103万円の壁が178万円まで引き上がる可能性があるということで紹介しましたが、実は年収の壁には他にも様々あります。

ここまで詳しく紹介した103万円の壁に加え、以下の3つの壁が立ちはだかります。

  • 106万円の壁
  • 130万円の壁
  • 150万円の壁

【前提】壁には、税金の壁と社会保険の壁の2種類存在する

壁を1つずつご紹介する前に、皆さんに知っていただきたいことがあります。それは、壁には大きく2種類存在するということです。

税金が掛かるかどうかを判定する「税金の壁」と、社会保険料が掛かるかどうかを判定する「社会保険の壁」の2つあるという点は重要ですので、きっちり抑えておきましょう。

税金の壁税金が掛かるかどうかを判定するもの
▸103万円の壁、150万円の壁が該当
社会保険の壁社会保険料が掛かるかどうかを判定するもの
▸106万円の壁、130万円の壁が該当

社会保険とは

一言で言うと、私たちの生活や健康を支える公的制度です。
社会保険には様々な制度がありますが、公務員の皆さんが加入しているものは
・健康保険
・介護保険(40歳以上のかた限定)
・年金保険(国民年金&厚生年金)
が該当します。

年収106万円の壁(社会保険の壁)

まずは106万円の壁です。実は、社会保険も税金と同様に扶養の概念があり、一定要件を満たせば被扶養者(=扶養される人)として社会保険料を払わずに済みます。その”一定要件”の1つが、「年収106万円未満である」というものです。

そのため、もし年収が106万円を超えてしまうと、その人自身で社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)を払う必要が出てきます。

年収130万円の壁(社会保険の壁)

次に130万円の壁です。これも社会保険に関する壁になるのですが、106万円の壁との違いは、「原則全ての人に社会保険への加入義務が生じる」点です。

実は、先ほどの年収106万円の壁は社会保険の加入要件の1つに過ぎず、必ずしも年収106万円以上の人全員が社会保険に加入しなければならないというわけではありません(細かい要件は割愛します。)。

ところが、年収が130万円に達すると、原則全ての人に社会保険の加入が義務付けられることになります。

106万円の壁一部の人に社会保険加入義務が生じる。
130万円の壁原則、全ての人に社会保険加入義務が生じる。

ということになります。

年収150万円の壁(税金の壁)

そして最後は年収150万円の壁をご紹介します。これは所得税の中の「配偶者特別控除」に関するお話です。

配偶者特別控除とは、世帯主や配偶者の収入に応じて税金の控除を受けることができる制度なのですが、配偶者の年収が150万円以上になると控除を受けられる金額が減っていきます。

まとめ

現在、大きな関心を集めている年収の壁の引き上げについてご紹介しましたが、103万円から178万円に引き上げることで、確かに税負担が減ることがお分かりいただけたと思います。

しかし、実はもう1つの社会保険の壁については言及されておらず、国民の税負担を減らすことを目的とするならば、社会保険の壁の引き上げも必要不可欠になると感じました。

皆さんの生活に関係してくるのは、結婚して配偶者がいる方やお子さんがいる方に限られるかもしれませんが、今後のライフプランを考えるうえでも年収の壁についてはこれからも目が離せないテーマだと思います!

最後に、本記事でご紹介した壁を整理しましたのでご確認いただけますと幸いです。

 税金の壁 年収103万円の壁
▸178万円の壁になる
所得税が課せられるか否かのボーダーライン
 年収150万円の壁配偶者特別控除の金額が減り始める金額
 社会保険の壁 年収106万円の壁一部の人に社会保険加入義務が生じる。
 年収130万円の壁 原則、全ての人に社会保険加入義務が生じる。